
「兄貴、一緒に行きませんか?」
あいつが何気なく口にしたそのひと言を、私は聞き逃さず、すぐに飛びついた。
ただ言ってみただけだ、うっかりしていたと言われたが、もう遅かった。
男だけで旅に出るのは、高校生のとき以来だった。
ふだんは私が旅の計画を立て、みんなを引っ張っていくことが多い。でも今回はあいつらの旅に割り込んだのだから、文句を言わずについていくことにした。

誰かのペースに合わせて動くのは、初めのうちこそ落ち着かなかったが、すぐに慣れた。おいしいというものを一緒に食べ、いいという場所へ一緒に行き、面白いということを一緒にすればよかった。
これなら、それほど迷惑にはなっていないだろうと思った。
けれど、ついていくのも、そう簡単なことばかりではなかった。
こいつはこれがおいしいと言い、あいつは歩こうと言い、また別のやつは違う場所へ行こうと言う。
あいつらは始終、ああだこうだと言い合っていた。
いつもの私なら、そこに加わって自分の意見も口にしただろう。
でも今回は、ただ眺めていることにした。
それも、なかなか面白かった。

旅のあいだ、カメラはたいてい私の手の中にあった。
笑った顔も、それぞれに違うポーズも、写真に残った。
写真を撮るのは好きだが、撮られるのはどうにも苦手だ。どうやら俳優やモデルに向く性格ではないらしい。
一人旅なら、何もかも自分の好きなように決められた。
でも、一緒に旅をするとそうはいかない。食べたいものも、行きたい場所も、人それぞれだった。
ときには自分の希望を引っ込め、相手に合わせなければならなかった。一緒に旅をして、そんな小さな気遣いが必要なのだと知った。
そうして旅から帰ると、アルバムはあいつらの写真でいっぱいになっていた。
肝心の私の写真は、あまりなかった。
写真をめくっていると、あいつらが言い合っていた姿が浮かんでくる。
あいつはうっかり誘ってしまったと言ったけれど、私は一緒に行ってよかった。
